長男で田舎暮らしの俺は、窮屈な実家から飛び出して町で働いていた。
嫁と結婚すると決まり久しぶりに両親と会ったとき
「長男なんだし、実家に戻ってこないか?田舎から仕事に通わないか?」と打診してきた。
俺は困った。田舎にはしがらみが多すぎて俺は苦手だった。
困っている俺を見て、嫁は俺が返事するより早く、
「仕事も通えない距離じゃないし、親孝行してあげて」と実家で暮らすことを俺に言ってくれた。
親は大変喜んで家をリフォームして、2世帯住宅にしてくれた。
俺には妹が3人いるんだが、親も妹達も俺みたいな男に結婚してくれる女性がいることを喜んでくれ、
近すぎず遠すぎずの関係を築いてくれた。
引っ越してからは、嫁はその持ち前の気さくさで近所の奥さん呼んでお茶会したり、
田舎の生活に溶け込んでいった。
親もそんな嫁を周囲に自慢して、4人目の娘のように扱ってくれた。
そんな生活が5年間ほど続き、何人もの奥さん友達が出来た。
俺も休みの日にはお茶会に参加して、仕事場の近くのケーキを差し入れしていた。
手先が器用な嫁は、自分で作ったケーキをお茶会に出すことが良くあった。
特にチーズケーキを作るのが大好きで、俺には良く判らないが何種類かのチーズをブレンドしていた。
ブルーベリージャムを作ってそれをチーズケーキに入れたってのがおいしかったな。
ある休日の朝、キャラメルシフォンケーキを作り終え、コーヒーを飲んでいた嫁が
突然いびきをかきながら寝込んだ。
いくら揺すっても起きない。
前に聞いたことがある。脳梗塞かもしれない。
慌てて救急車を呼び、MRI撮ったり、ICUに入ったり、とにかく嫁の名前を呼び続けた。
親もかけつけ、皆で嫁を心配していた。
が、残念ながら10時間ほどして亡くなってしまった。
静脈に血栓ができ、それが脳にまで回り詰まったそうだ。
元々心臓に疾患があったのだが、それが原因かはわからない。
今でも悲しくてたまらない。
何をして良いのかもう良く判らなくなり、実感も無い。
泣き叫ぶことも出来ずとにかく呼吸が苦しくて、
何かしていないと頭がおかしくなりそうで、何を思ったか一端帰宅することにした。
自宅に戻ると、部屋が荒らされていた。
