部屋の押入れを開けると、天板の隅に御札が貼ってあったのだ。
真四角の、手のひらくらい小さな御札。判読不明の字が、円形に朱で書かれている。
内覧のときには気付かなかったのだが、引越の後片付けをしていて、
初めて気が付いたという。
不気味ではあるが、剥す勇気もなくそのままにした。
そして引越しから1週間たった頃、夜の11時過ぎにチャイムが鳴った。
だれだろうとインターホンを取ると女性である。
3階の住人だという。
何か苦情か、と身構えて弟はドアを開けた。
「あの、夜分すいません。3階の○○といいますが、ちょっとお尋ねしていいですか?」
その女性を見るのは始めてだったが、見ると夜目にも顔が青い。いや蒼白である。
何かに怯えているのか、おどおどしてるっていうかそんな感じだった、という。
「何でしょうか」
「突然、こんな時間に失礼なお話なんですけど、お一人で住んでいるんですよね?」
「えっ?そうですけど」
「女性は住んでいませんよね」
「そうですけど、なんなんですか?」
余りに唐突である。第一、初対面の人間に聞く話ではない。時間も時間ですこしムッとした。
たぶん表情に出たのだろう、女性は
「あ、すいません。ゴメンなさい」
といって部屋へと戻っていった。
その時、女性が小さく「隣かぁ」とつぶやいたのが聞こえたという。
それから何週間かしたある日、隣の部屋が突然、引越し、空室になった。
隣には女性が住んでいたのだが、たまに来る程度だった彼氏らしき男性を
毎日、朝に見かけるようになった直後のことだったという。
隣が引越をした翌日、ごみ捨て場には、隣の部屋から出たと思われる
大量のゴミが置いてある。
ふと、目をやって息を呑んだ。
大量の御札であった。
それはコンビニの袋に入れて捨てられていた。
ところが、そんな詰め込まれているように見えない袋が裂けて
御札がにゅっ、と飛び出している。
弟は、怖くなってよくは見ていないが、その全てが二つに破かれていたと思う、と言った。
弟自身の部屋に何かが起こった訳ではなく、隣と、階上の部屋に何が起こったのかは
分からないという。
ただその後、休日などに、尋ねてきた3階の女性を見かけることがあるが、
その顔は、夜に尋ねてきた人間と同一人物だとは思えないほど血色のいい
元気そうな顔なんだ、と弟は話した。
●コメント
弟には女性を住まわせない事と条件を出しているのに、隣室と階上には住んでる(た)のが謎だな
●コメント
女性が住むのはいいけど男女の同居は駄目なんでしょ