
あれは暑い夏の日のお昼過ぎ…
いつものように、2歳の娘を連れて
息子の幼稚園へお迎えに行った帰り道。
「アイスクリーム、食べようか?」
暑かったので、三人で駅前のベンチに腰掛けて、
アイスクリームを食べることにした。
そんな日常の一場面。
もし、あのやくざが駅の階段を降りて来なければ、
ただの忘れ去られた日になっただろう。
その男は、顔に大きな刀傷があり、
見るからにヤクザだとわかるチンピラ風。
昼間から酒の臭いをプンプンさせていた。
したたか酔っていたその男は、私の息子のすぐ横に座った。
男はふっと顔を上げると、すわった眼で私の息子をジーッと見つめた。
私はドキドキしていた。
まさか、こんな幼い子供には手を出したりはしないだろうけど、
でも、こんな泥酔状態じゃ、普通の精神状態じゃないだろうし。
どうしよう!
私は心の中でつぶやいた。
何もなかったように、アイスクリームを食べ続けてはいたが、
もう味などわからなかった。
男は5歳の息子の肩に手を置いた。
やばい…
どうしよう…
下手に席を立ったら、何をするかわからないし。
しかし…男は凶暴ではなさそうだ。
5歳の息子を相手にくだを巻き始めた。