よく見るとその女性は、サングラスに白い杖を持っていました。
わたしがあわてて駆け寄って
「大丈夫ですか?」
と助け起こすとその女性は、全くもってハッキリしないくぐもった小さな声で
「大丈夫」
ということをボソボソいっていた。
まだ20代の女性でやっぱり眼が不自由と思われ、こんな深夜に大変だろうと
「どちらへいかれるんですか?」
とたずねた。するとその女性は、
「この近くの友人のマンションをたずねるつもりだったが、迷ってしまった」
みたいなことをまたボソボソと言った。それから、
「今自分がどこにいるのか分からなくなってしまった。
この近くなのでよかったら連れて行ってほしい」
と頼まれました。私は眼の不自由な人の手助けをするのは、
当たり前だと思い「いいですよ」といいました。
「じゃあ、腕を組んで連れて行って下さい」
と急に元気になったその女性と歩き出しました。
私達は腕を組んで歩き始めました。
「どんなものが見えるか」
としきりにたずね
「では左へ」
「その次を右へ」
と深夜の住宅地を腕を組まれ歩いていました。
その時、車が正面より通り過ぎていってライトがあたった瞬間、
明らかに私の表情をうかがっている様子でこちらを見ているような眼が、
サングラスの中に見えました。
こうなると疑わしいのと自分が置かれている状況に
(その女性に右手を両腕で組まれている。
左手にはハンドバック)はじめて恐怖がやってきました。(遅
ですが、本当に眼の不自由な人だったらという良心の呵責もあり
、2人でたっぷり15分は歩きました。またその道中、その女性は話す内容は
「今からたずねるのは私と同じ障害者です」
「その子はまだ小学生で、両腕がなくなってしまいました」
「ずっと落ち込んでいるのでセーターを編んであげたのだが
腕の部分をどういう風にしたらいいか迷った」
など、クリーチャーな話題満載で、私は人生で初めての恐怖に、
もう泣きそうになって必死で相槌をうってました。
連れて行かれるところはドンドンひと気のない暗い方向です。
いよいよ格闘のことまで考え無口になっていると、急にその女性は
「ここらへんのはずです。マンションの名前を言ってください」
と言い、私が
「〇〇〇マンションです」
というと
「ここでいいです。どうもありがとう」
とあっさり解放してくれました。
しまった!!やっぱり私の勘違いだった。
と恥ずかしく思いましたが、冷静になるにつれてどうしても変だと思い
(目が見えないのに自分が道を間違っているとなぜ分かる?等)
どうしても気になり、そのマンションが見える角路地で、
隠れて入口を見ていました。
すると、ものの1分もしないうちにさっきの女性が降りてきます。
しかも階段をスタスタ軽やかに!やぱっりイタズラだったのかと、
文句を言いに出て行こうとしたとき、もう1人誰か階段から降りてきました。
その男性は20代後半くらいでものすごく太っていて、
なんと両腕がない人でした。その2人は誰かを待っているように
キョロキョロして、何かボソボソ話しているようですが聞こえません。
するとその女性が急に男性のトレーナーを引きちぎるように脱がせ始めました
!両腕のない男性は抵抗しているようでしたが、あっさり脱がされました。
遠目でもわかるその人の腕のない肩の断面や、
あまりの突然のすさまじい光景にわたしは涙をボロボロこぼしながら、
でも必死で声を出さずに見ていました。
逃げ出したかったのですが、脚がすくんでいるのと、
見つかって追いかけてきたら、という恐怖で動けません。
男のひとは上半身裸で地面を転がりながら何か叫んでいます。
すると女性はバックから魔法瓶(?のようなものを取り出し、
男性になにか液体をジャボジャボかけ始めました。
湯気が見えたので、そうとう熱かったのは分かりました。
もうすごい絶叫なのですが、近所からはだれも出てきません。
私はもう恐怖に耐えられなくなり走って逃げ出しました。
さいわい追ってこられてはなく、夢中で自分のマンションに逃げ込み、
一晩中半泣きで過ごしました。
あれは何だったのでしょうか…
長文ですみません。だれか同じような人に出会った人いますか?もう6年前の話です。
後日談ですが、そのことがあってから2年くらい経過して、
わたしもすっかり恐怖を忘れたころ、
あるデパートでエスカレーターに乗っていました。
最上階に向かっていたとき、途中の階のフロアに
なぜか目に飛び込んでくる人物がありました。
歩きながら本当に一瞬、その人影を見るとあの女性です。
全く同じ服装でサングラス。間違いなかったです。
白い杖は持っていなかったのですが、
今度は女性の片腕がありませんでした。そう見えました。
女性は私の方に気づいている様子もなく、自分の足元を見ていました。
その先にはベビーカーがあり、その中の赤ちゃんに
もう1つの腕で何かしようとしている。
そばのお母さんは商品棚の方を向いていて全く気づいていない。
その光景が写真のように眼に焼きついていて、
意識するより体がエスカレーターを駆け上っていました。
エレベーターで降りダッシュで自宅へ帰り、
またもや半泣きでした。
もう、あのような人とはどんな形でも関わりたくなく。
赤ちゃんの事が心配でしたが、誰にも話しませんでした。
いつかまたどこかで会いそうな気がして鬱です。
聞いていただいてありがとうございます。