「あの家には私達と同じ年頃の男がいる。あの家の息子だが、あの家は血の近い結婚をするせいかあの男は頭がおかしい。
子供の頃から動物を殺したり、他の家の子供を川から突き落としたり首絞めたりした。
お刀自(高齢の婦人)に厳しく躾けられて家族には手を出さずに暮らしてるようだが、
あの家に出入りしてた手伝いの娘はある日急にいなくなった。
訪問販売の男があの家に入って行って、一向に出てこないこともあった。
それは何度もあった。
地元の人間もあの家の中には行かない。あの息子と家で二人きりになったらお仕舞だ。だからあんたも行ってはいけない」
という話だったらしい。
三姉妹の厳しい顔を見て、この話は本当かもと思ったと父は翌日すぐ東京に戻ったという。
その後副業も違う仕事に換えた。結果としてもっと早くお金が貯まり、母は手術し、回復後には何とか家族一緒に暮らせるようになった。
「訪問販売やってると、『知らない人間なんか家に上げたら怖いから』なんて言われるんだけど、
『知らない人間の家に上がる』っていうのも怖いよなって気づいたらもうあの仕事は嫌になった。
社長が言ってたんだけど、実際、訪問販売やってて仕事行ったままフラッといなくなる奴は多いらしい。
自分の意志で、仕事に飽きてとかお金や商品持ち逃げしようとかで、フラッといなくなったとかならまだいいんだけどね。
すっかり消息絶った人間にはもう理由は訊けないから」
と言ってた。
●コメント
まあヤクザな人間が多い商売だしね、金絡みの自主的な消息不明も多いだろうけど。
消息不明になっても探す身内が少なそうな業界でもあるな。
しかし本当に昔話みたいな話だね。
ヤマンバの家に行きかけた旅人が村人に、みたいな。
引用元:今まで生きてきて凄く衝撃的だった体験 4