
「カツ丼大やめます」
連日熱戦が繰り広げられている兵庫県西宮市の甲子園球場近くにある、
超デカ盛りカツ丼で有名な老舗「大力食堂」に、今年、そんな貼り紙が掲げられた。
「お腹を空かせた高校球児のために」と1966(昭和41)年の創業以来続けてきた
「名物」に何があったのか。高校野球ファンで賑わうお店を訪ねた。
店は甲子園球場の西側にある「新甲子園商店街」の一角にある。
昔懐かしい店内には、壁一面どころか天井にまで色紙が貼られ、
高校の部活から往年の名選手、沖縄から韓国、台湾からのお客のものも。
「壁が埋まってしもて、天井に貼ろうと思ったんやけど、脚立から落ちてしもてな。
2階にもまだ50枚ほどあるけど、どないしよかと…」。
店主の藤坂悦夫さん(81)が朗らかに笑う。
大盛りカツ丼(正式には「カツ丼大」)は、そんな藤坂さんの愛が詰まった「名物」だった。
兵庫県北部にある八鹿町(現養父市)の農家で育ち、神戸・元町の食堂で8年間丁稚奉公をし、
腕を磨いた藤坂さん。
「その頃の都会の食堂いうたら、量はそない多くないのに結構高うて。
土方や人夫の人らはものすごくお腹がすいた。わしは百姓育ちやったから、驚いてな」。
21歳で独立し、この地で店を開いたとき、「小遣いで食べに来る高校球児も気軽に来られて、
満腹になれるように」と「カツ丼大」を作った。